ドキュメンタリーは僕の生き方。ロヒンギャを追い続ける慶應生の理想の世界 #ドキュメンタリーバカ

みなさん突然ですが、ロヒンギャ民族について知っていますか?

イスラム教を信仰するミャンマーの少数民族で、宗教的理由等からミャンマー国内で迫害されており、難民として知られています。

今回はこのロヒンギャを追い続け、真実を報道するドキュメンタリーバカ、久保田徹さんにお話を伺いました。

好きなことを追求していたら仕事になった

リエ

インタビュアーのリエです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

久保田さん

慶応大学5年生の久保田徹です。よろしくお願いします。現在フリーランスでドキュメンタリー映像を作り、Yahoo!ニュース等でロヒンギャに関する記事を書いています。

リエ

フリーランスとのことですがどのような形でお仕事されているんですか?

久保田さん

たとえばYahoo!ニュースでは、自分で企画案を提出して、それが通ったら実際に映像を撮りに行って、記事を作ります。

リエ

なるほど。Yahoo!ニュースのような大きなメディアにお仕事をもらうようになるまでは、苦労した時期があったのでは?

久保田さん

正直そうでもないです。Yahoo!ニュースは専門家がそれぞれのテーマに関して記事を書いてるんですけど、僕はロヒンギャに詳しすぎて、たまたま知り合いから紹介されたのがきっかけでした。試験のようなものを受けて通ったので、実際に記事を書くことになりました。僕の周りの方は皆さん何十年もやられているベテランばかりで、20代は自分だけです。

リエ

好きなことを追求していたら仕事になった、というわけですね。

ロヒンギャとの出会い

リエ

そもそもなぜロヒンギャのドキュメンタリー映像を作るようになったんですか?

久保田さん

映像を作るようになったのは、大学でS.A.L(国際問題を啓発する慶應義塾大学公認学生団体)に入ったことがきっかけです。高校時代アメリカに留学していた際、宗教学の授業でロヒンギャを取り上げたビデオを見ました。その後すぐ何かのアクションを起こしたわけではないけど、なんとなくその映像が衝撃的で...。ずっと自分のどこかに残ってたんでしょうね。大学受験の際には、志望理由書にロヒンギャについて学びたいと書いて無事に合格できました。ただ実際に入学した当初は、ロヒンギャとか考えもせず、いろいろなサークルに入りました。バンドとかテニスとか。でも、どんどん辞めていって結局最後まで続いたのがS.A.Lだったんです。

そのS.A.L内で、たまたま先輩が日本にいるロヒンギャ難民にフォーカスしたプロジェクトをやっていました。僕もそのプロジェクトに参加していて、その先輩が引退して自分がプロジェクトを引き継ぐことになったんです。そこで初めて本格的にロヒンギャと向き合うようになりました。

リエ

久保田さんとロヒンギャが巡り会うのは必然だったのかもしれませんね。

怒る少年との出会い

リエ

久保田さんを突き動かす原動力は何ですか?

久保田さん

一人の少年との出会いです。大学3年のゴールデンウィーク中、ロヒンギャの人々が暮らす難民キャンプを取材しました。簡素なシェルターがたくさんあるキャンプ内で、多くのロヒンギャの人たちが閉じ込められて生活している状況でした。そんな中、キャンプの中で火事が起きました。火がどんどん燃え盛って大きくなっていくのに、消防車は1時間経っても来ませんでした。その時、二十歳の青年が怒りを訴えてきたんです。「こんな状況なのに誰も助けてくれない、僕たちはミャンマー政府に見放されているんだ!」と。その時の彼の表情が非常に印象的で忘れられませんでした。自分と同じくらい大きな可能性を秘めているはずの二十歳の青年が、今もキャンプに閉じ込められている。この衝撃がこの後の自分の活動の原動力となりました。



▲少年が登場するドキュメンタリー『Light Up Rohingya』(久保田さんの作品)

リエ

この映像を観ると、たしかに少年の強い憤りが伝わってきますね。不躾な質問かもしれませんが、どんなに彼らを取材しても結局取材する側は「外部の人間」という気がしてしまうんですが、同じ立場から共感して発信することはは難しくないですか?

久保田さん

その質問こそ現代の無関心を象徴していると思います。実際に会って相手を知っていけば当事者意識は生まれるものです。何も行動せず知ろうともしないのが一番よくないです。ちゃんと知って、距離を縮めれば、外部の人間ではなく当事者になれます。

リエ

なるほど、失礼しました。主体的に知ろうとすることが大事なんですね。

フリーランスとして生きる選択

リエ

どのような経緯でフリーランス映像作家に辿り着いたのでしょう?

久保田さん

大学3年の11月にS.A.Lを引退して、周りの同期は就活を始めました。そんな時、僕はクマ財団が行っているクリエイター奨学金制度に応募して、奨学金をいただけることになりました。これは学生アーティストや技術者が創作活動に専念できるように1年間財団が創作活動を支援してくれるというものです。このおかげで映像作りに専念できることになったので、大学を休学することにしました。年あれば一般企業への就職以外に、別の道が見つかるかもしれないと思って。本当に自然な流れだったので、“人生を決める決断”とかではなかったですね。


▲取材の様子

リエ

一般企業への就職は考えなかったんですか?

久保田さん

最初はテレビ局も考えていました。でもいろんな情報を集めるうちに、自分が発信したいスタイルとは少し違うかなと。既存のマスメディア(テレビ)は、どうしても受け手の態度に合わせてコンテンツを作ってしまうんです。僕の理想は、社会の無関心を打破するためには、送り手側がコンテンツを自由に発信できることです。だから、テレビ局には行かずフリーで活動して、オンデマンドが当たり前になるこれからの時代で通用するようなドキュメンタリー作家になろうと決めたんです。

リエ

オンデマンドの世界ってどんな世界ですか?

久保田さん

オンデマンドは、ネット上で視聴者が自分の見たい映像を選択できるシステムです。この場合、テレビの流し視聴と違って、視聴者はより主体的に映像を見て、内容を理解できます。そうすると結果的に様々なトピックに対する視聴者の関心が広がるのではないかと僕は思ってます。

リエ

主体的なメディア消費の世界なんですね。

主体的に議論が生まれる世界を創りたい

リエ

ご自身の今後の目標は何ですか?

久保田さん

ロヒンギャに限らず、様々な社会問題に対して世の中の無関心が減り、主体的に議論が生まれるような世界を創りたいと思っています。そのためには「受け身の視聴者」という構図が淘汰され、オンデマンドの映像消費が当たり前にならないといけない。

久保田さん

あとは、もっとドキュメンタリーをエンターテイメントのツールとして気軽に楽しむ世の中を創りたいです。直近の計画としては来年の9月からイギリスの大学院で修士号を取ろうと思っています。映像技術の進んだイギリスで、いろんな映像制作者に会ってインタビューしたり、技術を学ぶためです。

リエ

社会問題に対する無関心をなくしたいと願う久保田さんにとって、ロヒンギャはあくまで一つの切り口なのですね。最後に久保田さんにとってドキュメンタリーとはなんですか?

久保田さん

僕の生き方です。1回作り始めたら、好奇心とか使命感のようなものに突き動かされて、やめられなくなったんですよね。世界中で今起きている現実を、みんなに伝えたい。今の世の中では、フェイクニュースがあったり、報道されないニュースがある中で、とにかく正しい形で現実を知ってほしいと思って。そのための僕の生き方がドキュメンタリー作りです。

リエ

ご自身の抱いた問題意識に対して人生をかけて全力で向き合っている姿、本当にかっこいいです。本日はどうもありがとうございました。

無関心をなくすために自分がするべきこと

インタビュー中は冷静に受け答えていらした久保田さんでしたが「なぜそこまでロヒンギャの人々に共感できるのか」という質問に対しては語気を強め、知ることで当事者意識は生まれる、という考えを熱く語ってくださいました。

社会問題に対する無関心が減り、主体的な議論が生まれるような世界を創りたい。
そのために自分はフリーのドキュメンタリー作家になる。

久保田さんのように、まずは自分が作り出したい世界観、大きなビジョンを明確化し、そこから逆算して今自分が歩むべき道を選択すると、本当に自分のやりたいことに沿った、後悔のない時間が過ごせるのかもしれません。

久保田さんのツイッターはこちら

ドキュメンタリー作品『辺境に生きる子供たち』等上映予定 
東京ドキュメンタリー映画祭(12/7)ホームページはこちら

ライター紹介

Rie

文系女子大学生。アボカドが大好きです。

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